ステーブルコインの価格が安定する仕組みとは?裏付け資産を3分で解説
ステーブルコインは、発行元が価値を支える仕組みを用意しているから、米ドルや円に近い価格を目指せます。
ただし、価格が安定することは保証ではありません。発行元の経営や、裏付けとなる資産の中身に問題が起きれば、1ドルや1円から大きく外れる可能性があります。
この記事は、2026年7月28日時点の情報をもとに作成しています。
ステーブルコインの「裏付け資産」とは?
裏付け資産とは、発行したステーブルコインの価値を支えるために、発行元や信託会社が保有する現金・預金・短期国債などの資産です。
たとえば「1USDC=1米ドル」を目指すなら、発行元は原則として、発行したUSDCに見合う米ドル建ての資産を保有します。
日本銀行も、決済に使われるステーブルコインでは、銀行預金や短期国債などを裏付け資産とし、安全性と換金しやすさを確保する必要があると説明しています。
技術革新と地政学リスクの下での通貨・決済システムの未来|日本銀行
裏付け資産の正式名称は?金融庁での正式な表現を紹介
一般的には「裏付け資産」で問題ありませんが、正式な表現は異なります。
日本の制度上、信託型のステーブルコインについて金融庁は、「特定信託受益権の裏付け資産」という表現を使っています。
これは信託を使う型に限った制度上の呼び方です。すべてのステーブルコインに共通する正式名称ではありません。
令和7年資金決済法改正に係る政令の公布及びパブリックコメントの結果等について|金融庁
どうして価格が1ドル付近に戻るの?
基本は、発行と償還(しょうかん)の仕組みです。
償還とは、ステーブルコインを発行元に返して、対応する法定通貨に交換することです。
たとえば、1USDCを発行元に返せば1米ドルを受け取れる仕組みが機能していれば、市場価格が0.99ドルに下がったときに買う人が出ます。1ドルに交換できると考えるからです。
反対に、1.01ドルまで上がれば、新たに発行して売ろうとする動きが出やすくなります。こうした売買が、価格を1ドル付近へ近づける役割を担います。
ただし、誰でも発行元へ直接交換できるとは限りません。たとえばUSDCは、一定の条件を満たした法人などがCircle Mintを通じて直接発行・償還でき、個人は取引所などを通じて交換するのが一般的です。
USDC on Ethereum|Circle
裏付け資産があれば安全なの?
安全性を判断する重要な材料ですが、それだけで「安全」とは言えません。
確認したいのは、次の3点です。
- 裏付け資産は何か。現金・国債・ほかの資産のどれか
- 発行量と裏付け資産の額が見合っているか
- 発行元や信託会社の情報公開、監査・証明が十分か
さらに、発行元の経営不振、銀行など保管先のトラブル、換金が集中する事態もリスクになります。
発行元が経営不振になった例はある?
実は、経営不振になった例はちゃんとあります。
代表例は、米ドル連動を目指したUST(TerraUSD)です。USTは現金などを保有して支える型ではなく、市場参加者の売買によって価格を保とうとしたアルゴリズム型でした。
2022年に米ドルとの連動が崩れ、Terraform Labsはその後に破産手続きへ進みました。米証券取引委員会(SEC)によると、USTと同社のトークン価格は連動崩壊後にほぼゼロまで下落しています。
Terraform and Kwon to Pay $4.5 Billion Following Fraud Verdict|SEC.gov
USTは、現金や国債で裏付ける型とは設計が異なります。それでも、「発行元や仕組みが壊れれば、価格の安定は守られない」ことを示した事例です。
ペイオフのような制度はある?
ステーブルコイン全体に、銀行預金と同じペイオフが自動で付くわけではありません。
ペイオフは、預金保険制度の対象となる預金を保護する制度です。一般預金などは、1人あたり1金融機関ごとに元本1,000万円までと利息が保護されます。
預金保険制度|金融庁
一方、日本で電子決済手段を扱う事業者には、利用者財産を会社自身の財産と分けて管理する「分別管理」が求められます。これは利用者保護のための大切なルールですが、ペイオフと同じ補償制度ではありません。
「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令第三十二条第七項の規定に基づき認定資金決済事業者協会の規則を指定する件(案)」等の公表について|金融庁
ステーブルコインを持つときは、「ペイオフがあるか」ではなく、次を確認しましょう。
- どの会社・信託会社が発行に関わるか
- どんな裏付け資産を保有するか
- どこで保管するか
- 発行元や取引所に問題が起きたとき、どう換金・返還される設計か
まとめ
ステーブルコインの価格は、裏付け資産と、発行・償還の仕組みによって安定を目指しています。
ただし、価格が安定するかどうかは、発行元の健全性、裏付け資産の内容、換金の仕組みに左右されます。銀行預金と同じペイオフが一律に使えるものでもありません。
「1ドル連動」と書かれていることだけで判断せず、誰が発行し、何で価値を支えているのかを確認することが大切です。
まいのあとがき
「裏付け資産があるなら、発行元が潰れても大丈夫?」と疑問に思いませんか?
答えは、発行元が潰れても必ず全額戻るとは言えないです。
信託型のように、発行会社の財産と利用者のための資産を分ける設計はあります。でも、実際にどこまで保護されるかは、発行方法、資産の中身、保管先、契約内容で変わります。
だから、ステーブルコインは「値動きが小さい暗号資産」ではあっても、普通預金の代わりとして何も確認せずに置いてよいものではありません。
