ステーブルコインのデメリットとは?「安定」が崩れるリスクを3分で解説
ステーブルコインの弱点は、価格が安定することを目指していても、お金としての安定性が崩れる場面があることです。
確認したいのは、単なる価格だけではありません。発行元を信頼できるか、必要なときに換金できるか、決済手段として受け取ってもらえるかも重要です。
この記事は、2026年7月29日時点の情報をもとに作成しています。
「安定」には3つの意味がある
ステーブルコインが決済に使われるには、次の3つが保たれる必要があります。
| 確認したいこと | 崩れるとどうなる? |
|---|---|
| 連動する通貨と同じ価値か | 1ドルや1円から価格が離れる |
| 発行元から換金できるか | 必要なときに法定通貨へ戻せない |
| 決済手段として受け取ってもらえるか | 相手が特定の銘柄を受け取らず、支払いが成立しない |
どれか一つでも崩れると、「安定したお金」として使いにくくなります。
1. 連動価格が崩れる「デペッグ」
米ドル建てステーブルコインは、1枚=1ドル前後を維持することを目指します。
しかし、発行元や裏付け資産への不安が広がり、多くの利用者が一斉に売却・換金しようとすると、1ドルを下回ることがあります。これが「デペッグ」です。
国際決済銀行(BIS)も、大手のステーブルコインであっても市場で基準価格からずれることがあり、信頼が揺らげば値下がりが急に広がる可能性を指摘しています。Stablecoins: framing the debate|Bank for International Settlements
「ステーブル」は、価格維持の仕組みを表す言葉であり、結果を保証する言葉ではありません。
2. 発行元や銘柄ごとに信頼性が違う
銀行振込では、受け取る側は「同じ1万円」として受け取れます。
一方、ステーブルコインでは、同じ1ドル建てでも、どの会社が発行しているか、どんな資産で裏付けられているかによって、信頼のされ方が異なります。
利用者が不安を感じれば、その銘柄を受け取らない、別のステーブルコインへ交換する、といったことが起こります。
日本では、電子決済手段を扱う事業者に、利用者財産の分別管理や監査に関するルールがあります。ただし、日本の制度があるからといって、海外発行のすべてのステーブルコインや海外サービスに同じ保護が及ぶわけではありません。「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令第三十九条第一項の規定に基づき金融庁長官の指定する規則を指定する件」等に対するパブリックコメントの結果等について|金融庁
3. 米ドル建てなら、円との為替変動は残る
米ドル建てステーブルコインは、米ドルに対して安定することを目指す仕組みです。円に対して安定する仕組みではありません。
たとえば1USDCがほぼ1ドルでも、円高になれば、円で見た価値は下がります。
これはステーブルコインの失敗ではなく、米ドルを使う以上は避けられない為替変動です。円で必要な支払額が決まっている企業や生活者にとって、米ドル建てステーブルコインは「安定した円」ではなく、ドル資産です。
4. 便利な送金は、運用ミスにも注意が必要
ステーブルコインを自分で管理する場合、送付先アドレスやネットワークを誤ると、送金の取り消しが難しいことがあります。
秘密鍵やシードフレーズを盗まれれば、資産を動かされるおそれもあります。さらに、国や事業者のルール変更によって、利用できるサービスや銘柄が変わる可能性もあります。
金融庁は、暗号資産交換業者などを狙ったサイバー攻撃による資産流出が世界で多く発生しているとして、セキュリティ強化を求めています。「暗号資産交換業等におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針(案)」の公表について|金融庁
まとめ
ステーブルコインは、価格を安定させることを目指す決済手段です。
ただし、価格の連動、発行元への信頼、換金のしやすさ、送金の安全性は別々に確認しなければなりません。
「何に連動しているか」だけでなく、「誰が発行し、どの仕組みで使うのか」まで見て、初めて安定性を判断できます。
まいのあとがき|為替リスクはどうしようとしている?
結論からいうと、国や企業も為替リスクそのものをなくそうとしているわけではありません。
海外取引をする企業は今も、代金を円・ドル・ユーロのどれで決めるかを契約で決め、必要なら銀行で為替予約などを使います。ステーブルコインになっても、ドルと円の交換レートが動く問題は残ります。
そこで各国が進めているのは、主に2つです。
1つ目は、ドルだけに頼らず、自国・自地域の通貨建ての決済手段を用意することです。欧州委員会は、ユーロ建てステーブルコインの基盤がユーロの国際的な役割を強める可能性があると説明しています。DLT and tokenisation: paving the way for an ‘internet of value’|European Commission
2つ目は、あらかじめ合意した為替レートで、2つの通貨の受け渡しを同時に終える仕組みです。BISの実証実験では、このような同時決済によって「片方だけ送ったのに、もう片方が届かない」リスクを減らせる可能性が検証されています。Project Rialto: improving instant cross-border payments using central bank money settlement (technical report)|Bank for International Settlements
つまり、ステーブルコインは為替をなくす技術ではありません。為替交換と送金の手続きを、より速く、合意した為替レートに基づく受取額を明確にできるかを試している段階です。
参考にした公式サイト・公的機関
- Stablecoins: framing the debate|Bank for International Settlements
- Project Rialto: improving instant cross-border payments using central bank money settlement (technical report)|Bank for International Settlements
- DLT and tokenisation: paving the way for an ‘internet of value’|European Commission
- 「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令第三十九条第一項の規定に基づき金融庁長官の指定する規則を指定する件」等に対するパブリックコメントの結果等について|金融庁
- 「暗号資産交換業等におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針(案)」の公表について|金融庁
