ステーブルコインの種類とは?安定性と独立性で見る4つの仕組み
ステーブルコインで最も重要なのは、銘柄名ではなく、何を基準に価値を保ち、誰に依存しているかです。
ドルや円で支払いをするなら、法定通貨を裏付けにするタイプが、現時点では最も安定性を目指しやすい仕組みです。一方、金や暗号資産を基準にするタイプは、特定の国の通貨から距離を置ける反面、円やドルで見た価値は動きます。
この記事は、2026年7月29日時点の情報をもとに作成しています。
4種類の違いを先に比較
| 種類 | 価格を支えるもの | 決済通貨としての安定性 | 特定の国の通貨からの独立性 |
|---|---|---|---|
| 法定通貨担保型 | 預金・短期国債など | 比較的高い | 低い |
| 暗号資産担保型 | 他の暗号資産 | 中程度 | 中程度 |
| 商品担保型 | 金などの商品 | 低い | 比較的高い |
| アルゴリズム型 | 発行量を調整する仕組み | 低い | 高い設計を目指すものがある |
ここでいう「独立性」とは、米ドルや日本円のような特定の国の通貨に価値を連動させない度合いです。独立性が高いことと、安全性が高いことは同じではありません。
1. 法定通貨担保型|支払いに使うなら最も分かりやすい
法定通貨担保型は、発行元が預金や短期国債などを保有し、それを裏付けに発行するタイプです。
たとえば米ドル建てなら、発行したコインと同程度のドル資産を保有することで、1コイン=1ドル前後を目指します。Tether(USDT)やUSD Coin(USDC)、JPYCなどがこのタイプとして知られます。
「1ドル分の支払いをしたい」「受取額を1ドル相当として決めたい」という用途では、現時点で最も扱いやすい仕組みです。
ただし、ドル建てである以上、米国の金融政策やドル円の為替変動からは独立できません。また、発行元、裏付け資産、換金の仕組みは銘柄ごとに確認が必要です。
2. 暗号資産担保型|発行元への依存を減らす設計
暗号資産担保型は、イーサリアムなどの暗号資産を担保として預け、その価値をもとに発行します。
代表例として、Dai(DAI)が知られています。
担保となる暗号資産は価格が動くため、発行額より多めの担保を預けます。これを「過剰担保」といいます。
特定の銀行預金だけに依存しにくい設計を目指せる一方、担保資産の急落や仕組みの複雑さが課題です。価格を安定させるために、法定通貨担保型より多くの条件が必要になります。
3. 商品担保型|金の価値に連動するタイプ
商品担保型は、金などの現物資産を裏付けにするタイプです。
金は特定の国が発行する通貨ではないため、ドルや円への依存を減らしたい人にとっては魅力があります。IMFも、金には特定の国に属さず、相手の信用に依存しないという性質があると説明しています。Gold’s Lasting Luster|International Monetary Fund
ただし、金連動型のトークンには、発行会社、保管会社、金が実在するかを確認する仕組みが必要です。金そのものとは違い、完全に誰にも依存しないわけではありません。
さらに、金価格は円やドルに対して動きます。IMFによると、金価格は2025年に約40%上昇しました。Gold’s Lasting Luster|International Monetary Fund
そのため金連動型は、「安定した決済通貨」ではなく、世界で価値を理解されやすい金をデジタルで持つ仕組みと考えるほうが正確です。
4. アルゴリズム型|独立性を目指すが、信頼が崩れやすい
アルゴリズム型は、十分な法定通貨や金を保有する代わりに、コインの発行量を増減させるなどの仕組みで価格維持を目指します。
特定の国の通貨や銀行預金への依存を減らす設計を目指せます。しかし、利用者の信頼が急に失われたときに、価格維持の仕組み自体が機能しにくくなる課題があります。
2022年には、TerraUSD(UST)が米ドルとの連動を失い、短期間で価格が大きく下落しました。国際決済銀行(BIS)も、特にアルゴリズム型は発行者が主張するほど安定的ではないと指摘しています。III. The future monetary system|Bank for International Settlements
なぜ何種類もあるの?
同じ「安定したお金」を目指していても、何を信頼の土台にするかが違うためです。
- 法定通貨担保型は、既存のドルや円の信用を使う
- 金連動型は、国に属さない金の価値を使う
- 暗号資産担保型やアルゴリズム型は、ブロックチェーン上の仕組みを使う
日本の法律では、法定通貨と連動し、額面で償還することを約束するタイプを、主に「電子決済手段」として規律しています。世界ではより幅広い仕組みがステーブルコインと呼ばれるため、同じ名称でも性格は大きく異なります。「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第5回)議事録|金融庁
まとめ
円やドルでの支払いを安定させたいなら、現時点では、適切な裏付け資産と換金の仕組みを持つ法定通貨担保型が最も理解しやすい選択肢です。
一方、金連動型は、特定の国の通貨に依存しにくいという魅力があります。しかし、金価格は動くため、円やドルの代わりに使う決済通貨とは別物です。
「安定性」と「独立性」のどちらを重視するかで、見るべきタイプは変わります。
まいのあとがき|金連動型は世界共通のお金になれる?
金は、国境をまたいでも価値を理解されやすく、特定の国の通貨だけに依存しない点が魅力です。
その意味では、金連動型のデジタル資産が、世界で使いやすい価値の保管手段になる可能性はあります。
でも、世界共通の決済通貨になるには、金の価格が大きく動くことが壁になります。今日1グラムの金で買えるものと、来月買えるものが同じとは限らないからです。
さらに、世界中の店や企業が受け取り、すぐに円・ドル・ユーロへ交換でき、金の保管や監査も信頼されなければなりません。
今のところ、金連動型は「国に依存しにくいデジタル資産」としては面白い存在です。ただ、ドル建てステーブルコインの代わりに世界の支払いを担う段階にはありません。
参考にした公式サイト・公的機関
- III. The future monetary system|Bank for International Settlements
- Gold’s Lasting Luster|International Monetary Fund
- 「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第5回)議事録|金融庁
