日本国債レポのオンチェーン化|MUFG・Progmatの実証

MUFGグループ、Digital Asset、Progmatは、2026年8月13日に日本国債のトークン化とレポ取引のオンチェーン化の実証開始を発表しました。各社が何を担当し、業務の効率化がどこまで収益につながるのか。実証で確認する機能と、まだ分からない効果を分けて見ます。
情報確認日:2026年10月4日。発表で確認できた実証の内容を整理します。実用化の完了、利用料金や業績への寄与を本稿で確認済みとはしません。
国債のレポ取引では、何をやり取りする?
レポ取引は、債券を使って短期の資金や証券を融通する取引です。日本の「レポ」は現先取引と債券貸借取引を含みます。現先では、将来の決まった日に同種・同量の債券を決まった価格で買い戻す、または売り戻す条件を付けて売買します。
参考:レポ取引|日本証券業協会
債券貸借は債券そのものを貸し借りする取引で、担保の有無や種類は契約によって異なります。国債を持つ側と短期資金や国債を必要とする側をつなぐ仕組みとして見ると、コンビニでの支払いとは利用者も扱う業務も違うことが分かります。
参考:レポ取引|日本証券業協会
今回のオンチェーン化は、何を試す?
国債と支払資産の受渡しをつなぐ
実証は、国債と決済用のデジタルマネーを同時に受け渡すDVPを検討します。国債は振替国債としての法的な性質を保ち、オンチェーン処理と連動して口座管理機関の振替口座簿を更新する構想です。チェーン上の記録だけに置き換えれば完了するという説明ではありません。
参考:日本国債のトークン化とレポ取引をオンチェーン化する実証実験・8月13日発表|MUFGほか
DVPは証券の受渡しを資金の支払いの条件とする仕組みです。日本の国債では1994年4月に実現しています。今回の新しさはDVPの発明ではなく、Canton Networkを使う国債のトークン化と決済処理の連動を試す点にあります。
参考:証券と資金の同時決済(DVP)とは何ですか?|日本銀行
取引開始から返済までの処理をつなぐ
もう一つの対象は、レポ取引の一連の処理をオンチェーンで管理し、自動化することです。Secured Financeの貸借プロトコルを使うと説明されています。24時間365日の取引・決済や事務の効率化は発表が掲げる期待であり、実際の所要時間や削減額を示した結果ではありません。
参考:日本国債のトークン化とレポ取引をオンチェーン化する実証実験・8月13日発表|MUFGほか
各社は、何を担当する?
| 担当 | 実証で示された役割 |
|---|---|
| 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 市場参加者 |
| 三菱UFJ銀行 | 市場参加者、口座管理機関、預金取扱金融機関 |
| 三菱UFJ信託銀行 | 口座管理機関 |
| Digital Asset | Canton Networkを使う国債トークン化等の支援 |
| Progmat | 既存業務の分析と事業化に向けた検討 |
| Secured Finance | レポの一連の処理を担う貸借プロトコル |
参考:日本国債のトークン化とレポ取引をオンチェーン化する実証実験・8月13日発表|MUFGほか
決済用の資産には、トークン化預金やステーブルコインの活用を検討するとあります。どちらを採用するか、一般の人が使うどの銘柄にするかが確定した発表ではありません。会社の名前、技術基盤、実際に渡すお金の種類を別々に確認します。
日本銀行も金融機関の大口決済に関わるデジタル技術やトークン化した預金の検討を説明しています。ただし、その検討を今回の実証での採用や、個人向けの提供開始と読み替えることはできません。
参考:デジタル技術がもたらす決済と金融の未来・5月29日講演|日本銀行

資金が早く動けば、各社が儲かる?
待機資金や事務作業が減れば、利用する金融機関の費用が下がる可能性があります。基盤の開発・運営会社が得る売上は、実際の契約や料金によって決まります。利用者の費用削減と、提供会社の売上・利益は同じ数字ではありません。
100億円の資金を1日早く使え、年1%の資金調達費用を1日分減らせると仮定すると、365日で割った金額は約27.4万円です。同じ条件で250回なら約6,850万円。実際の利率や削減額ではなく、導入・運営費用や税も含まない計算例です。会社の売上を表す数字ではありません。
計算は「100億円×1%÷365日」と、その金額×250回です。毎回100億円全額の待機が1日分なくなるという強い前提を置いています。実際には、対象額、短縮する時間、資金を使う頻度、追加費用をそろえて調べる必要があります。
株式の材料として追うなら、正式な導入先、対象の取引量、契約と料金、導入費用、同じ期間で比べた実測効果を確認します。今回読んだ発表だけでは各社の収益額や業績・株価への影響は分かりません。参加企業の名前だけで利益を予測しないようにしましょう。
次の発表では、何を確認しよう?
DVPで片方だけを渡すリスクに備えても、国債レポ市場にあるすべての問題が消えるわけではありません。日本銀行が紹介するFSB報告は、レバレッジ、ストレス時の資金需要の偏り、主要な仲介者への依存などを挙げています。決済手順の改善と市場全体の資金繰りは分けて見る必要があります。
次の公式発表を読むときは、実証か正式提供か、参加者と決済資産、実際に扱った取引の範囲と効果をメモしましょう。実用化を判断する材料は、既存の口座簿との連動、障害時の扱い、利用時間、費用まで確認できるかです。個人の購入先や儲かる株を探す前に、業務がどこまで変わったかを追う記事として使ってください。






